ペーパーバックリーディング


木曜日は、空いている日。(あっしは、土日は仕事があるので、うらやましがらないでください)
昨晩からパーパーバックリーディングにチャレンジした。


大阪プラザホテルのジュンク堂拡張で行ってみたところ、洋書半額セールで50%オフだったので、ハインラインの『夏への扉』を買って読んで見た。山下達郎の名曲もある、初音ミクも歌っているあれである。


バーターレッスンで「路上」を一年以上かけて、北米人の先生にちょびちょび読んでもらっているが、こっちの<夏とび>は、ちょっと読みやすく1ページ当たりの文字数もかなり少ない。語彙も路上よりは易しく、わからない単語を調べなくても一応は楽しく読める。
しかし、それだと、サスペンスを楽しむための作中内の事実関係を十分読み取り、記憶して、読み進められるほどではない。


復讐もので、証券の所有や特許をめぐる事柄、コールドスリープの手続き、50年代に作者が予想したテクノロジーなどが、登場人物の確執に絡む。主人公がエンジニアで会社設立したりが本筋に絡むので。さすがは、早川の「SFハンドブック」でオールタイムベス一位だけあって、一気に読ませる。


楽しく読む為には、ある程度の分量を読んだら、翻訳(図書館で借りてきた福島正実の名訳と言われている)で確認して、また英語原書に戻るということをやった。雑用を片付けつつ、12時間で半分読んで、午後九時になり、今日中に結末を知りたいなと思って、翻訳で残り半分を読んでしまった。


まず、一にも二にも語彙が足りない。語彙と言っても、物を表す名詞、動作を表す動詞(特に動詞句)、ニュアンスに富む、物や人や出来事を形容するニュアンスの深い形容詞、基本的な語彙がまだまだ不足している。


英語圏の独特の発想、「日本語では違う言い方をするところ」を英語独特の表現になっていて、ちょっと止まって考えさせられる箇所もある。
未知の文物、かなりの北米の文物についての情報が日本にも入っているとはいえ、住んでないと分からない文物もある。


大体そんな感じで、さて、いろいろ忙しいなかで、来年はコンスタントにすこし時間を割いて、ペーパーバックがより読めるように<学習>を続けようと思っている。


一日かけての実験で、分かったことは、このような目標の達成は、置かれている条件をも鑑みて、短期決戦モードではダメで、地味に息長く継続することが大切だろうということだ。


バカ丁寧にいちいち辞書を引く方法は、時間がかかりすぎて途中でいやになるコトの方が多い。だからといって、辞書引かないと、翻訳に頼って
もっとも大切な英語のセンスを養う、英語だけで理解できる読解力を身につけるという本来の目的からずれてしまう。


通読後に、わからなかった単語を辞書引いてみるというのを、やってみよう。一応そのために、赤線は引いた。


なんかいい方法はないでしょうかねえ。


(翌日の付記)


残った半分の、そのまた半分を読んだ。日本語で全部読んだ後だと、知らない単語でも前後のつながりで、意味が分かってしまう。
かなりの数の単語がわかる。また、知的に理解するのに加えて、すぐれた作品の迫力のおかげで、エモーショナルなニュアンスなんかもばっちりだ。
(全部の未知の語彙がそうではないけれど)
こりゃあ、とても良い方法だ!


さて、皆さん、第2言語教育の長年の経験者として、これがどういう意味でいい方法か、も少し詳しく解説を加えておきましょう。


語学学習のステップ、
1)知らない学習項目の存在を知る
2)その意味や機能を理解する(ただし、それにも段階がある)
3)使えるようになる(これにも、また、段階がある)


1)では、与えられた文脈に置ける意味や機能をしっかり理解すること
2)では、その基本的な意味や機能、プロトタイプとなる意味、そしてそこから派生する意味や機能の広がりへ
3)では、できればネイティヴの教師についてもらって、2)の理解と平行に修正してもらいながら磨きをかける


今回のペイパーバックリーディングについて申しますと、中級から上級にかけての語彙について1)から2)にかけての段階通過中と考える。


ときどき、
教師にもいるし、多くの学習者が、私でさえも、難行苦行を強いてこれが効果的と思い込んでしまうことがある。
特に、記憶の強化に関しては、答えを見てしまっては、「脳」を甘やかしてしまってよくないとの考えに陥りがちだ。
しかし、覚えていないものは、いくらうーんと時間をかけても出ないものは出ない。便秘の場合ならきばるべきときもあるだろうが。


むしろ、忘れて、またインプットしてやる、また忘れて、またインプットというサイクルを何度も回した方が、
覚えられる数量は多く、時間もかかるまい。忘れた単語はすぐ答えを見れば良いのである。チェックを忘れずに!←後で辞書引く時の為に(という仮説を持っている)古本屋に後で持って行く人は、シャーペンでうすう〜くチェック。
たとえ頭が<ざる>でも、何度も水をかければ水垢ぐらいは溜まる、という考え方。


あるとき、ある学校で、漢字の小テストについて、「学生が出る順番を覚えちゃうと、テストの意味がないから、同じ範囲でも新しく順番を入れ替えて作り直してください」という指示を受けたことがある。
ま、一理あるとは思うのだが、むしろ、固定観念とおまけに固定してしまった(余り好ましくない)感情から、「怠け者の学生にはちょとでも手を緩めてはダメ、どうせあの子たちはさぼるんだから、手間がかかっても厳しくしないとダメなのよ、新人の教師たちも、指導してやらないとよく考えずに知らない間に甘いことしちゃうんだから・・・」というようなめんどくさそうな表情で言われたものだから、


私は「しかし、学生の現状のレベルなら、難易度をあげるほうばっかり考えないで、順番覚えてなら解答が書ける程度を狙った方がクラス全体としては学習効果があがるんじゃないでしょうかねえ」と胸中で反論していたことがあった。ひと昔前と今ではクラスによって、学生によって、かなりレベルが違うから。こういうことは、経験のある先生方ほど、ご自分の「正しい」方針をいつも疑ってみて、具体的に最適な難易度パラメーターの決定に活かすべきものだろう。