Do you Know what the professional is ?  Part 3 ハイクオリティを支えるスピードと密度


     今回は、ベテランの先生のレッスンを見学させてもらって、得たことをまとめてみました。


先々週遠く江戸まで下って(京都が中心だった頃は、関西人は江戸へ下ると言っていたのだ。小松左京氏談)、英語教室を29年やっている方の授業見学をさせていただいた。日本人の英語の先生が日本人の生徒に英語を教える場合。


人のを見せてもらう事で、プロの授業のありようについて、次のような3点が浮かび上がったので、はなはだ簡単ではありますが、ここにメモっておかんとぞ思ふ。


1)初期段階できっちり仕込む
入学時などの初期段階で、しっかり鍛えること。高いハードルを越えさせて、たとえ厳しいトレーニングも「こんなものなのだ」と思い込ませること。私なりの比喩で言うと、飴細工の最初に材料の飴を暖めて柔らかくする作業をきちんとやるとでも申しましょうか。刀鍛冶なら、鉄を溶かす、そんな感覚。


 この反対は、生徒、学生のペースに合わせ、それもできない方に合わせて、その先必要な課題をこなしていく基礎力をつけられなくなる。うちに来ている中学生を見ていると、基本的なことをこなしていくためのいろいろなベーシックな能力がよく鍛えられていないように感じている。


 それができないと一定の成果が期待できる基礎がつかず、離陸(これも私流の比喩だが)できない。
 離陸できた感覚とは、恒常的に進歩できる状態に入ることである。
 離陸できたあとは、そのときの巡航速度で目標達成できるかどうかが次のチェック項目になる。
 ネイティヴ、つまり日本人の教師が教える日本語学校での「離陸」というと、私の私的用語としてだが、ある程度日本語だけで教師とやりとりができるようになることを指す。が、むしろ大気圏外に出られたという言い方の方が良いかもしれない。何段階ものブースターによる加速を経て至るものなので。


2)あらゆる点でスピードを学習者のマックスにもっていく
  聞くものはナチュラルスピードから始まり、分らなければ手加減を加えれば良い。
  反復するスピード、のみならず、
  書くスピード。これも大量に新たな情報を処理していかねばならない外国語習得には必須の能力。
  また、ある活動から次の活動への移行も、休ませない。次はなにやるなにやると決まっていて、休ませない。


  これはひとつは活性化した頭の緊張を緩めないとこだとも言えよう。
  これを理解するにはスイッチングの概念が有効。せっかく外国語のスイッチが入っているのだから、いちいち切って母語に戻さないというのがネイティヴによる授業の<キモ>なのだ。

 
  日本人の教師が日本人の生徒に教える場合でも、『学習のスイッチ」を切らせないということが実行されているのだと思う。

  
  1)のようなだらだらした生徒の場合、なにかひとくぎり終ると「ほっ」とひといきついて、なにか雑談
    のたねはないかと探したり、ともだちのじゃましたりする傾向が出たりする。


3)材料は与えるが、答え(最終形)は自分で考えさせる、作らせる
  問題集などもなさっていたのだが、間違いは指摘し、文法の本の何ページを見なさい!と厳しく指示を出す。が、教師の方は、いくらいらいらとじれても答えは生徒が自分で見つけるまで我慢して言わなかったのを
見て、感心した。


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  2)のスピードを詳しく言うと、同じ教材の長文読解の指導で、7人の中学生を相手にひとりひとりの進度に合わせて、暗記したり、日本語訳を付けて口頭で言ったりするのを、次から次に直していくのであったが、それは伝説の聖徳太子のようだったが、そんな芸当ができるのは、教材の隅から隅まで頭に入っており、
また長年の経験で生徒の間違うパターンとそれに対する適切な指示ももうよく分っているから、できるのであった。そこで、その時点の生徒にとって必要充分な情報を濃い密度で与えていくこともできる。受け入れられる限りのポイントを与えていく。生徒にとっては消化できる限界まで塩分濃度も濃くなる。


 教師がネイティヴの場合、その気になれば、ある項目について与えるべき情報量は無限大にもなり得る。
 ネイティヴでない教師は、その代わり、教材を熟知する事で、スピードと密度の、効果を授業に現出させる事ができるというわけだ。

 生徒のつまづきについても、
 日本語教育でも、二年コースを2〜3回やると、学生にとって易しい所、難しい所、間違うパターンなどは
大体分ってくるもの。


ラフなまとめで申し訳ないが,以上。
次回のプロシリーズ第四弾は、日本語教育のフィールドにもどって、日本語による日本語の説明、つまり直接法の鉄則のようなものについて述べる予定。


ではみなさん、これにて失礼いたします。