行方昭夫著「英文の読み方」(岩波新書)


なにか紹介するときは、シュニンチャンの基準で、これは本物だと思ったものだけを紹介しようとつとめている。だから、普段、私が世話になっているトーイック対策の本などはほとんど紹介しない。大きく言えば読解、細かく言うと解釈、和訳、翻訳についてのこの本は、来たるべき必要にタイミングが合ったのと、自分の書物の良し悪しに関する鼻が働いて、つるっと買って、するっと読んでしまった。


例文がたくさんあって、長年の指導の賜物が凝縮されている。いちいちもっともなポイントが易から難へ、ステップ毎に配列されている。



まず多読のすすめがあり、それから、解釈の基礎として、単語の意味を丸暗記した誤訳をあてはめてはいかんという注意がくる。日本の英語の辞書の高機能を活用しない手はないという注意が続く。ほんで、文と文のつながりを「筋」ということばで表し、その捉え方を、接続詞、関係代名詞、分詞構文の例で、筋の捉え方となる。日本語と英語を比較すると、発話に伴うメタレベルのガイドメッセージが日本語は多く、英語は少ないように私には思われていたのだが、英語の場合は、どういう仕組みで、そいつが示されるのか、がなんとなく分る。分ったかも?


この辺まで読んで、なんとなく実力がついた気持にもならしてもらえるが、いちいちの具体的なケースで、このレベルの課題をこなせるようになるには、相当の量をしっかり読んでないとだめだろう。おれはずっとこの辺りのレベルでうろうろしている。


さて、ステップが進んで、言外の意味を読み取るという段になると、こんなことが書いてある。なにか普通と違う言葉遣いがあるときには、そこに筆者の含ませたいニュアンスが読み取れる。
なあるほど。確かに、小説など読んでいて、また外国人に日本語読解を指導していて、「普通はこういうのですが、ここで、###な単語を使っているのは<レトリック>><修辞>でありまして、ここで筆者は皮肉を込めて・・・」なんて説明しているので、よく分る。


でも、英語をそこまで読み込むための読書経験値をあげていかねば、実際には難しいッス。


ラストまで来ると、単なる和訳と翻訳の違いについてさらっと触れたあとに、プロを目指す人へのアドバイスとして、四技能をしっかりやりなさい、と書いてある。どこまでも、当たり前だが
ほんまに大事な事を通しているご本でした。途中から、英文にきっちり取り組まないで、解説と訳文に走ってしまった私には、「猫に小判」と言われても仕方のない読み方をしてしまい、すみません。初中級がやや詳しく上級は、その世界をちょっと覗かせてもらった、という印象を得たが、役に立った。


明日からプライベートで日本文学が読みたいというクライアントとレッスンを始めるのだが、まさにその準備にはぴったりの本だった。明日は、ここでまとめたことが、日本語の散文作品ではどうなっちょるか、ざっと「読み」のポイントを示してやる。あはははは。あははははは。あはあは。はははははは。