いったい誰がこんな朝早くに・・・?

(前回の続きです。前回を読んでない人は、そっちを読んでから、どうぞ)
・・・と眠い目をこすりながら、サンティーがドアを開けると、顔色を変えたセリムが飛びかからんばかりに入ってきた。「わたしのからだがたいへんになった。Some green thing comes out from my penis...チェックしてくれませんか?」
はにゃあ?」サンティーはおどろくと、めをまんまるにして、いつもこの漫画のような文句を口走るのであった。


ガンガンガン。「せ、先生。すみません。朝早くすみません」
いったい誰がこんな朝早くに・・・?・・・と眠い目をこすりながら、玄関にレンズ越しに訪問者を見ると、困惑げなサンティーだった。私がなにごとかと尋ねる前に、セリムの異状を報告するサンティーであった。「痛みは」「さあ」「昨日何をした」「I dont know. Fu..made love with Han-san may be...But I dont know.いわないでくださいよ。先生、私が言ったこと、分かります。セリムは私に怒ります」


二人がそんな関係なのは、みんな知っていることだろうに。サンティーの部屋で待っているセリムの***のチェックを行い、確かに膿のようなものが・・・わしゃよう分からんから、放課後病院へ行こうということになった。


授業中も落ち着かないセリム。休憩時間に、珍しく男どもだけで集まって、セリムを中心にひそひそ話している。おおかた、みんなは心配する振りをしながら、病気の怖さをさんざん吹き込んで脅かしているのだろう。普段弱みをみせないように努めているセリムが半泣きだ。



仕事を定時で抜けて、私とセリムはバスで40分かけて町へ出た。診察の結果はというと、結局たいしたことはなく、雑菌のせいで化膿しただけであるとのお医者の見立て。ただし、セリムにとっての問題が生じた。お医者はきつく、こういったのだ。彼女も調べるから連れて来なさい。それから避妊具をつけなさい・・・と。帰りのバスの中で、セリムは心配していた類いの病気ではないことが分かった安堵と、新たな難問に悩み始め、二つの感情に複雑な表情をたたえていた。気位の高いセリムは薬局でそんなものを買うことは絶対にできないことなのだ。


その夜更け、サンティーが私の部屋を愚痴をこぼしに訪ねて来た。
「セリムは、自分はガイジンだから、薬局でみんなが見る、コンドーム買うのは恥ずかしいから、ぼくに買いに言ってほしいと言った。ぼくもみんな見ますでしょう。ぼくもガイジンですよと言ったら、でもサンティーは恥ずかしくないだろうって」
「むちゃくちゃですね。すごいわがままですね」
二人して笑った。