3月20日(日)


51歳と3ヶ月になった。昨日は広瀬隆「原子炉時限爆弾」を購入。去年出た本だけど、大地震とその影響による原発の事故について警告している本であった。


つくづく自分のことを反省しなければならないと考えている。ひそかに自負していたことが浅はかな虚栄だったこと。


小松左京のファンであった自分なのに。フィクション、ノンフィクションを問わず熱心にほぼ全部の作品を読んだのに。自然の脅威、地震津波の恐ろしさについての認識が不十分だった。大江健三郎のファンであった自分なのに、フィクション、ノンフィクションを問わず熱心にほぼ全部の作品を読んだのに。核の本当の禍々しさ、そいつがもたらす災厄が分かっていなかった。筒井康隆のファンであったのに、フィクション、ノンフィクションを問わず熱心にほぼ全部の作品を読んだのに。社会の裏に狂気がひそんでいていつでも牙を剥いて、そいつのせいであっけなく人々が犠牲になる。そんなことは分かっていた・・・かもしれないが、現実に顕現したときの威力については軽視していたとしか言いようがない。


でも、それらはやってきた。


今日は「原発はなぜ危険か」という本を求めて書店に聞いてみたが、古い本で品切れ中との返事だった。事務所に戻ってから本棚にみつけた。まだ読んでいなかったので購入した記憶がなかった。置いてある場所を把握していなかったのでこの間探したときに見つけられなかったのだ。それで古本屋ではよくみかけるけど買っていなかったんだと思いこんでしまった。あった、あった。SFのコーナーの一隅の環境問題のとこに。


四日前、中国人の以前の教え子だった若い友人を関西空港近くのホテルまで送った。その前、成田、羽田からの中国行きは切符が取れず、中国政府の特別機にも乗れそうにないので名古屋、関空の切符はどうか調べてほしいと依頼を受けた。月曜日、14日の段階で23日以降でないと空席はないとのことだった。テレビの問題の発電所の中継をみると爆発していないほかの原子炉の白煙が映っていた。家に一泊してから出発したが、遅くまで彼の仕事のことやらいろいろな話をした。


大阪在住のプライベートレッスンのクライアントらは今のところは留まる予定。今日のクライアントは、なんと子どもができたという報告。これは明るいニュウス。帰国も視野に入れて今後のことを検討しているとのこと。もし帰国してもスカイプでレッスンしようと話した。ふと、その人の目の周りのメイクの全体が蝶の羽のようなカタチを作っていることに気がついた。


原発についての報道やネット上の情報は、12日から、ずっと注目していて、いろいろと収集した。某巨大掲示板ツイッターフェイスブック、テレビのストリーム放送、いくつかのメルマガとグループメール、そこからリンクを伝って、新聞や動画にあたり、取り込むべき情報をコピーし、ストリーム放送の重要な内容のものは聞き取ってメモを取った。


こんなに自分のペースでなく、相手のペースで動き続けることはひさしぶりだった。ああ、日本語学校の現場で仕事しているときはこのようであったなあ、と体の奥底が懐かしがっている。


でも、さすがに絶えずニュウスに備えて情報媒体を見張り続け、休みなしに慌ただしい保存作業を、外出とレッスン以外、一週間やったんで小休止を入れたいと思い始めたところでもある。


原発事故の情報の内容と信頼性では、私の眼に触れる範囲では、<原子力資料情報室>がよいと思う。
東芝の原子炉内部の格納容器の設計と、温度と気圧の影響を研究していた方、後藤政志氏をおもな解説者として、気になる放射線への影響についてのエキスパートの話も動画としてあがっている。今後も必要な間は毎日動画による
情報提供をしてくださるようだ。
このサイトがなければ、私の個人的記録作成も始まらなかっただろう。


その後の情報収集の過程で、NPO<環境エネルギー政策研究所>の情報発信に触れて、現状の理解と個人レベルでも準備できる対応策の指針をここから得ることができると判断している。


これらのサイトをご存知の方も多いかと思うが、マスコミを通しての行政、電力会社、原子力保安院、テレビ局の解説者の情報提供だけではますます不安になるという方はご覧になって、比べてみるとよいと思う。


ところで、まだ地震津波が来ることなど思いもしなかった3月10日の木曜日が明けた午前午後は、ワルプルギスの夜ときゅうべえとまどかとほむらが来週はどうなるのかばかり考えていたものだが、結局、国中がそれどころではなくなってしまった。放送は中止になった。


今、まんがとアニメのレクチャーを教授しているクライアントには、このすごい作品の紹介のために、予定を変更して魔法少女ジャンルのあらましを説明した。それに列島を揺るがす状況とのシンクロ感を。


そのとき思ったのは戦闘少女ヒロインは、魔法少女ものというジャンルがあったからこそ生まれたのではないか、「魔法少女まどか☆マギカ」はそこからの逆輸入かと思うが、たぶん続々と作られるアニメ、そのほかのゲームを含めたフィクションなどたくさん見ている人には特に目新しい所もないのかもしれない。


それから昨日の午前4時前には予断を許さぬ原発の状況を探る緊張から逃れて、ベランダへ出てスーパームーンを眺めながらタバコを一服した。村上春樹さんめえ、と思ったのであった。月は言われていたように大きく見えるものではなかったが、初めて見るような鋭い白銀の輝きをまとっていた。つい今しがた生まれたばかりのようだった。こちらが恥ずかしくなるほど得意げにめかしこんだお月さんだった。


こちらが恥ずかしくなるのは、言うまでもなく、それほどにゴージャスなお月さんの光に照らされるに値する我々人類ではないからだ。


午前3時。NHKのニュースが始まった。東北大地震と深刻な事態に陥っている福島原子力発電所について。大阪は強い雨が降っている。