なまなまなましい夢


特にそのシーンの前の記憶はない。
自宅で何をするでもなく、自分の右手を左手でナイフを使えば切れると思い、切ってみた。そんな夢を見た。私は左利き、文字だけ右手で書いている。バターを切るように手の甲の側から手首の下の箇所にまっすぐナイフが入りたやすく反対側まで刃が通って、全体に切断線が入った。痛みや出血はなかった。ナイフを置いて右手をちょっと持ち上げてみてから元に戻すとなんらかの粘性があって付着した。切断線以外は変化なく、特におもしろみもなにもなかった。ところが、切断線からじわじわとわずかな出血が始まってしまい、くっつきが悪くなった。自分も慌て始めた。取り返しのつかないことをやってしまったと感じた。救急車を呼ぶために電話をかけにいきながら、「出血多量死」という語彙が脳裏に浮かんだ。


というところで夢は終わった。


寝る前に実際に大学ノートに手書きで少し文章を書いたが、書きながら字が乱れすぎて、これは後で見ても読みづらいだろうなと思ってから寝た。そのことと一番関連がある内容ではある。どうも日常のルーティンワークを退屈に感じ滑稽なところをみつけてくすくす笑いがちであるのだが、なんか、良くないものが溜まっているのだろう。


ナイフでからだの一部位を切ってもなにも起きない夢の中の自分の不死性の確信がじわーっとした時間経過の中で崩れて行く感覚は、心理的にリアルな感触の麻痺と復活のドラマとして貴重なようでもある。


その前に読んでいたのは「戦闘美少女の精神分析」で、いわゆるアウトサイダーアーティストというカテゴリーに入ると著者の言うギーターという人の話に去勢恐怖のことがあった。その前に読んでいたのは「荘子 内編」で、刑罰を受けて足を切られた有徳の士が登場していた。


あんまり掘り下げても良くない気がするので、この辺で。


Django Reinhardt / I see you in my dream