唯一無二の場所、その最期  ジャズ喫茶&パブ、トップシンバル閉店


午後の陽差しは気持ちよく、JR阪和線沿線の眺めも秋というよりは初夏のような緑が流れていた。


地下道を上がり、天王寺公園側の出口すぐのビルの階段を降りたところがトップシンバルである。


入り口に、延長して、今日8月31日が最終日と書いた張り紙。


午後3時近く、名残を惜しむ客たちでほぼ満席。


マスターに奥が空いていると言われてそこへ座った。


ボリューム位置12時の大音響の「ありがたさ」を、改めて身にしみさせながら、
この日の選曲に込められたマスターからのメッセージを感じ、貴重なこの空間の最後を味わった。


子どもの頃の長風呂での瞑想の代わりに、学生時代はここに難しげな本を持ち込んで数時間コーヒー一杯で
よしなしごとを頭ん中でぐりぐり回す、そんなことをする場所だった。


ぴくんと何かがひらめいて体内を電気が走ることがたまにあった。


かましくも、しばらくアルバイトまでさせてもらった、実は元従業員でもある。
そう言うのもおこがましいが、その後は不義理を重ね、たまにしか足を向けなかった私であるが。


今は、こういう場所が無くなるのが惜しいという気持ちしかない。


マスターには、ここまでトップシンバルの営業を続けてくださったことを感謝します。


これをお読みになっている皆さんのまわりにある空気のように当たり前の場所も、時の流れに流されて消えて行くかもしれない。


少しでも長く続くように、できることがあったら、やってあげてほしい。自分のためだと思って。


できない場合は、せめてその場所のことをしっかり胸に刻むことだ。


私はそれすらできなかった。無くなると知って、そう思った。


トプシンバルのホームページです。 マスターのジャズについて、ミュージシャンについての含蓄のある意見が読めます。
http://www4.ocn.ne.jp/~tcymbal/index1.html


私にとっては自分のアドリブ作りの指針になるスルドイ指摘が入っている。